教材化シリーズ
熊本平野
宇土半島
・御所浦島
御船層群
金峰山
メガロドン
アカホヤ火山灰
天草市御所浦町の地域地学素材の活用
<ねらい>
 熊本県天草市御所浦町には、中生界白亜系{御所浦層群(烏帽子層、江の口層、唐木崎層)、姫浦層群}と新生界古第三系{弥勒層群(赤崎層、白岳砂岩層)}が分布している。御所浦層群からは貝類や恐竜の化石、姫浦層群からはイノセラムスやアンモナイトの化石、弥勒層群からはコリフォドン科やトロゴサス(裂歯類)などのほ乳類化石が産出している。これらの化石は当時の環境を復元したり、年代を決定したりするのに役立っている。特に、赤崎層から産出しているほ乳類化石は、新生代のものとしては日本最古のもので、標本の状態も良く、世界的にも注目されている標本である。また、地層の露出が大変良い。町内だけで白亜紀から古第三紀の地層や化石を観察することができ、地層や化石の学習の場として最適である。

<使い方>

1.地層と岩石の観察をとおして、地層のつくりやでき方を学ぶ。
地層が見える露頭で色の違う層の岩石を比べる(地層の厚さ、色、含まれる粒の大きさ、手触りなどを比較するとよい)。写真(上)は、御所浦本島から牧島に橋を渡ってすぐのニガキ化石公園横の砂岩泥岩互層である。このような地層の観察を学習の導入に位置づけることによって、堆積実験の動機づけをおこなうことができる。
2.化石から古環境を知る

御所浦には、花岡山化石採集場がある。そこには、貝化石を多量に含む岩石がたくさんある。岩石に含まれる化石をハンマーで割って採集し、スケッチをし、化石の特徴を捉え、「これでかんぺき!!花岡山の化石」ガイドブック等で名前を調べる。地層や岩石の種類ごとに見つかる貝化石の種類が異なること等から、地層がさまざまな環境で形成されることに気付かせることができる。
3.水の中でできた地層が、長い年月をかけて陸地になったことを推論する。
御所浦で一番高い山である烏峠の山頂には、写真のようにアンモナイト(グレイソニテス)の化石がある。アンモナイトが海に住んでいたことをとらえた後に、なぜ海に住んでいたアンモナイトの化石が烏峠山頂で発見されたのかという疑問を持たせ、意見を出させるとよい。
4.御所浦白亜紀資料館を活用する

御所浦白亜紀資料館には、貴重な化石が展示してあり解説も詳しい。学芸員さんに予め連絡をしておくと、歯の化石から肉食恐竜や草食恐竜の種類が想定できることなど、丁寧に解説をしていただけるので、ぜひ白亜紀資料館に連絡をして、活用していただければと思う。
<参考文献>

田代正之(2004):天草の構造運動とそれに伴う化石群集と環境の変遷.日本古生物学会(熊本・御所浦)普及講演資料,1-23.