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第2回研修会 平成19年12月24日(月)
研修会を御船町カルチャーセンターにて行いました。
今回の研修会では「博物館の効果的な活用について」というテーマのもと、熊本県内の4つの博物館・資料館の学芸員らと、学習会(パネルディスカッション)を行いました。


御所浦白亜紀資料館(廣瀬浩司氏)
<天草の地質>
天草には、御所浦層群、姫浦層群、弥勒層群、本土層群といった地層が広がっている。
御所浦層群は9800万年前の地層で、特に知られている化石は三角貝である。姫浦層群は8500万年前の地層で、アンモナイトやイノセラムスを産出する。弥勒層群・本土層群は5000万〜4700万年前の地層で、哺乳類化石や貨幣石を産出する。
このように天草は化石、岩石、地形など多くの地質化石素材に恵まれた地域である。
<御所浦白亜紀資料館と島まるごと博物館>
職員は館長と学芸員2名。目的に応じた利用相談、現地見学案内などの他、学芸員が学校に出向く出前授業、出前展示、標本の貸し出しなども行っている。
館内には触れることのできる化石の展示があり、化石クリーニング作業の見学もできる。少人数であればクリーニング体験も可能である。化石発掘体験もでき、ハンマーのレンタルや資料の配付、企画展におけるワークシートの配布なども行っている。
また、島内にあるアンモナイト館、化石採掘場、ニガキ化石公園などの各資料館を拠点に、自然・歴史・民族・文化などを学べる「島まるごと博物館構想」を計画中である。島内移動には海上タクシー、バス、レンタサイクルなどを利用できる。
今後の展望としては、学校や研究機関とのより深い連携をとることがあげられる。

阿蘇火山博物館(池辺伸一郎氏)
<阿蘇火山>
世界最大級のカルデラと雄大な外輪山をもつ阿蘇。中央火口丘群から構成される阿蘇山は、約30万〜9万年前の間に大規模な噴火が4回あった。しかし平成7年以降、阿蘇の中岳は活発化していないため、中学生以下の子どもは阿蘇の噴火を知らないという実状がある。地球の営み、火山からの恵み、地域の歴史・文化、地球環境への理解、防災の心得などを知るためにも火山教育は必要である。
<学校教育における博物館の活用>
博物館では阿蘇火山の生い立ちの他、阿蘇の地形や地質、活動史、リアルタイムに火口を映す火口カメラなどが展示されている。
博物館教育の特徴として「収蔵資料(実物)、専門の学芸員、フィールド、テーマに関わる情報」が必要とされるが、阿蘇火山博物館はそれらを兼ね備えた博物館である。
教育活動としては、フィールド学習、展示・収蔵資料などを用いた学習、出前授業などの他、火山の噴火や溶岩でできる地層を体験できる火山実験も用意している。また、学芸員によるアウトリーチ活動、講演会、シンポジウムなどを行っている。
火山地域に住む人々にかぎらず、観光で訪れる人々に対しても「火山と深いつながりを持ちながら生活している」ことを認識してもらうことが重要である。

熊本市立熊本博物館(清水稔氏)
<総合博物館>
熊本博物館は、地質・動物・植物・理工・天文・考古・歴史・民族を学ぶことのできる総合博物館である。郷土に立脚し、人間生活に密着することを基本に、広域の情報を提供、一般に開放された市民参加型の博物館をめざしている。
<熊本市立熊本博物館>
それぞれの分野に専門の学芸員をもつ総合博物館である。各展示室の他にプラネタリウム室がある。
館内には研修室、特別展示室、プラネタリウム室、プラネタリウム前室などの多人数を収容できるスペースが設けられ団体への対応も可能である。
博物館の教育利用として、博物館に来館していただく場合は、展示の見学、プラネタリウムでの学習投影、学芸員による講義、ものづくり教室や科学実験の体験学習などのプログラムがある。また、学芸員が学校に出向く場合は、学芸員による出前授業、ものづくり教室や科学実験などの体験学習、学校の空き教室に組み立て式の展示台を設置し収蔵資料を展示する「移動博物館」も実施している。
今後、移動博物館のPRをしていくことが重要となる。

御船町恐竜博物館(池上直樹氏)
<御船層群>
御船には御船層群という地層が広がっている。御船層群は9000万〜8500万年前のものであり、日本で最初に肉食恐竜の化石を産出した地層である。最近ではハドロサウルス類の頭骨(脳函を含む)の一部が発見され話題を呼んだ。
<御船町恐竜博物館の出前授業>
地学分野の中でも古生物に特化した博物館である。クリーニング体験、化石レプリカづくり、講話などの教室を頻繁に行っている。また、博物館で申し込みをすれば、実際に化石産地を訪れ化石採集を体験することもできる。
博物館外での教育としては、教職員対象の研修会や出前授業などを行っている。化石を用いた学習や地層観察などの他に、博物館所有の走査型電子顕微鏡(SEM)を学校まで運び、顕微鏡を演示で使ったり、子どもに操作させたりする授業も行っている。良い顕微鏡写真であっても子どもの注意を引くことは難しいが、顕微鏡を実際に操作しながら画像をスクリーンに映し出すことができるので、子どもの興味・関心を喚起することが可能である。また、課題研究的な学習も行える。
しかし電子顕微鏡を使用するには、どうしても準備に時間がかかってしまう。学習形態やプログラムの開発、学習環境の整備を行っていくことが今後の課題となる。


学習会終了後は、御船層群上部層(恐竜化石の産地)を訪れ、実際に恐竜化石の発掘や地層の観察を行い、研修を終えました。
研修会参加者が発見した骨化石